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Special Talk

会津の里山から発信する 人に自然に寄り添う農業のかたち

土に触れ、虫や草木の声に耳を傾ける。育てた作物を加工する。
自然と向き合い、本来の自分を取り戻す。

農業には生業のひとつという枠を超えた、たくさんの可能性が秘められています。

チャルジョウ農場、そる工房、Dana Village。
それぞれの特性を生かし、穏やかにつながり合うことで、
わたしたちらしい農業への取り組み方を伝えていけたらと思っています。

農業という生き方を実践し、広めていきたい

小川 未明

そる工房 代表

実は僕、農業が嫌いでした。子供の頃なんて、夏休みになると父に朝4時に叩き起こされて『ドナドナ』みたいに連れて行かれて(笑)。そんな環境から逃げ出したくて、もがいたこともありました。でも今、こうして農のある暮らしをしているのは、幼い頃から生活の一部だった農業に次第に魅力を感じるようになったから。特に、父から受け継いだ無かん水栽培はこれからの地球温暖化や水資源の問題を考えた時に、とても意味のある方法なのではないかと期待しています。「栄養価コンテスト」で2位に輝いた味の良さも自信につながりました。

これからの持続可能な農業にとって必要なことは、自然に寄り添う栽培の形を模索、実践しながら、その価値をいかに見える化していくか。そのためにつながりを作り意識を共有してくことが僕の役目でしょうか。生き方としての農業を常に模索しています。

自分らしく生きたい人に、農業はきっかけをくれる

小川 美農里

ダーナビレッジ 代表

父の農業は一般的な方法から見れば全然効率が良くないですよね。1本1本枝葉を吊り上げている農家なんていないし、水をやらないので、多くの知識や技術が必要です。その代わり、株の間を空けてのびのび育てることでひとつひとつの実においしさや栄養が凝縮される。

わたしはそんな父の農法が人の育ち方にも当てはまる気がしていて。すべての枝に実をならすチャルジョウ農場のメロンやトマトのように、いろんな才能が開花してこそ、その人らしい生き方ができるのではと考え、様々なワークショップやリトリートをオーガナイズしています。

都会に住んでる人や農業に触れたことのない人が、うちの農法に触れて“こんな生き方をすれば自分らしくいられるんだ”と気付くきっかけになってくれたら。生きるのに必要な食べ物を生産できるということ以外にも、農業はそういう意味で生きる強みとなると思います。

自然とともに生きる心地よさを次の世代へ

小川 夕紀子

そる工房

作物を育てるっていろいろな感覚を研ぎ澄ますことでもあるんです。 植物の状態を見て、その時々に必要な手当てをしてあげられるのも、感覚を大切にしているから。そしてそれは、相手の気持ちを思いやるという人間同士のコミュニケーションにも通じるんじゃないかなと、子どもたちと農業をしていると感じます。

自然の中で鳥の声を聞き、風を感じながら作業することで養われた体験は、自分のベースになっていくはずだし、何より自分の食べ物を自分で作る技術は、これからの時代を生きる彼らにもきっと必要なこと。まずは身近に自然を感じて、そんな暮らしが本当に気持ちの良いことなんだよ、ということを農業を通して伝えていけたらいいですね。

知識や技術を高めることと共に、工夫できる農家に

小川 光

チャルジョウ西会津農場 代表

無かん水栽培の特徴は水をあげないことはもちろんですが、枝を立てるというのがもうひとつの原点。従来の栽培の既成概念から抜け出た考え方が必要でした。これから農業を学ぶ方にも、細かい技術よりも“こんな方法はどうだろう”“こうしたらどう育つかな”と、自分で考えて実践することを大切にしてほしいです。

たとえば草刈りひとつとっても、どれを刈ってどれを残すか考える。必要な植物まで排除してしまうと花粉交配する虫が減ってしまったり、こやしが流されてしまう危険があるからです。植物本来の力、そして周囲の環境の力を出し切るためには、当たり前のことにも疑問を持って取り組むことが大事なのです。加工や品種改良、栽培方法など、技術を身につけるには時間もかかるし、基礎知識も必要。だけどそれ以上に工夫ができる人であってほしいなと思います。

聞き手・文:渡部 あきこ
撮影:小山 加奈